(元)うつ病患者の独り言 for はてなブログ

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うつ病集団認知療法受診レポート(第8回、最終回)

静岡市こころの健康センター:http://www.city.shizuoka.jp/deps/kokoro/desaki_kokoro_group.htm

  • 前回(第7回)受診レポート

(2011/02/16 - Wednesday:http://d.hatena.ne.jp/hal_dynast/20110216#1297866372

うつ病」に悩む人(僕自身も含め)のため、また日本ではうつ病認知療法を行っているところが少なく、情報が手に入りにくく困ってる人のため、これから僕が受診してきた内容を、差し障りのない範囲でレポートに書き起こしてみます。

※注:僕がこのBlogに書き起こすのは、あくまで「静岡市こころの健康センター」で実施される「うつ病集団認知療法」についてです。他の医療機関で行われる認知療法は、この内容と異なる場合があります。


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2ヶ月、全8回の講習も今日が最終回。
今日は、「考え記録表(思考記録表)」記述の掘り下げを行った後、参加者の感想と講師の挨拶で終了となりました。


・再掲:「考え記録表(思考記録表)」には、次の7つの項目があります。

  1. 「状況」
  2. 「気持ち(気分)」
  3. 「浮かんだ考え(自動思考)」
  4. 「理由(根拠)」
  5. 「見直し(反証)」
  6. 「結果(適応的思考)」
  7. 「気持ち(心の変化)」(2.「気持ち(気分)」が、どのくらい変化したか)


・追記:上記の項目で、( )で囲った用語が、認知療法で使用される本来の用語です。今回の認知療法用テキストでは、専門用語を解りやすくするために、一般的な言葉に置き換えて使用しています。
特に説明がない限り「用語(本来の専門用語)」の形式で記述します。


・再掲:「うつ病の人特有の、考え方のクセ(特徴的な認知のゆがみ)」には、下記の9種類があるとされています。

1.白黒思考
あいまいな状況に耐えられず、白黒はっきりつけないと気が済まない。


2.過大評価と過小評価
否定的なことは大げさに、肯定的なことは無かったかのように、物事を捉える。


3.極端な一般化
些細な、少数の事柄をとらえて、あたかもそれが全てに当てはまるように考えてしまう。


4.すべき思考
「〜するべき」「〜するべきだった」と、過去をひたすら悔やんだり自分の行動を責める。


5.自己関連づけ
何か悪いことが起こったら、全て自分のせいで起こったことだと自分を責めてしまう。


6.気持ちからの決めつけ
客観的事実や視点でなく、その時の気分で現状を判断してしまう。


7.部分的焦点づけ
客観的視点でなく、自分が着目していることだけで、結論を出してしまう。


8.根拠の無い決めつけ
十分な証拠も無いのに、思いつきだけで否定的な結論を出してしまう。


9.否定的自己予言
最初から否定的な予測をして、自らを萎縮させて、予測通りに失敗してしまう。

  • 今日の要点
  • 例:今日「考え記録表(思考記録表)」作成練習に使った事例。(先週の再掲)
  • 「1.状況」

職場で、仕事を進めるために相談しなければならない事がある。
でも皆忙しそうで、聞きたくても聞けない。

  • 「2.気持ち(気分)」

・憂鬱(85%)
・気が重い(95%)
・焦り(90%)
・情けない(90%)

  • 「3.浮かんだ考え(自動思考)」

このまままでは仕事が進まない。
・困ってるのに気づいてもらえない。
・聞くのは恥ずかしい。
・聞いた人が困りそうで申し訳ない。


※強調したのが「強く気持ちにつながる考え(ホットな自動思考)」。(テキストでは丸で囲みました)

  • 「4.理由(根拠)」

・他の人の仕事を止めてしまう。
・自分1人では解決出来ない。
・間に合わないと上司に怒られる。
・初歩的なことかもしれないのに、自分には分からない。

  • 「5.見直し(反証)」

・後で相談に乗ってもらう時間を取ってもらう。
・今聞いた方が、後になって聞くより問題が小さくて済む。
・聞こうとしていることは、仕事の優先度として低いかも。
・上司は、部下の相談に乗るのが仕事だ。

  • 「6.結果(適応的思考)」

・仕事はチームプレーなので、他の人の仕事を考慮しつつ自分の仕事の必要性を分かってもらう。(90%)
・他の人に聞くのも仕事のうちだと考える。(70%)
・1人で困ってるばかりでは他の人に分かってもらえないので、とにかく必要なことは言う。(50%)
・上司に伝えて、判断を仰ぐ。(90%)

  • 「7.気持ち(心の変化)」

・憂鬱(35%)
・気が重い(30%)
・焦り(45%)
・情けない(5%)


「考え記録表(思考記録表)」を記入したとき、「6.結果」の確信度の値が低かったり、記入はしたもののそれを実行に移せないのは、「「考え記録表(思考記録表)」の内容を、頭では理解したものの、気持ちが納得していない」場合が多いです。
うつ病患者は顕著ですが、マイナス思考を他者から指摘されたり、考えた末気がついても、そう簡単に考えを切り替えられるものではありません。ましてや「プラス思考をしなければ」と強要されても、本心ではまず納得出来ないでしょう。


そういうときは、間を置いて改めて「「考え記録表(思考記録表)」を「掘り下げ」してみます。
上記の「例」で、ありがちな事例をピックアップしてみます。

  • 「3.浮かんだ考え(自動思考)」

・聞くのは恥ずかしい。
 ↓

  • 「4.理由(根拠)」

(「例」で出てこなかったもの)
・恥をかくのが怖い・・・恥をかいたら駄目である・・・「6.気持ちからの決めつけ」
・恥をかくべきではない・・・「4.すべき思考」
 ↓

  • 「5.見直し(反証)」

・任された仕事を、自ら全うしようとする気持ちの裏返し。
・「聞くは一時の恥聞かぬは一生の恥」
・etc.

  • 「3.浮かんだ考え(自動思考)」

・聞いた人が困りそうで申し訳ない。
 ↓

  • 「4.理由(根拠)」

(「例」で出てこなかったもの)
・仕事が忙しいときは、他の人も忙しいはず・・・「7.部分的焦点づけ」
 ↓

  • 「5.見直し(反証)」

・他の人への配慮が過剰に行き過ぎ。
・etc.

あと、「仕事の初歩的なことが分からず、聞くに聞けない」事例もよくありますが、長期休職からの復職や、引きこもり状態からの社会復帰では、分からないのが当たり前(パソコン初心者が、長文入力やプログラミングが出来ないのと同じ)です。
このような事例では周囲のサポートやフォローが必須で、職場や仕事の基本をまず覚えることから始めればOKだし、そのように周囲が取りはからうべきです。


「考え記録表(思考記録表)」を記入すること自体が、「自分自身の分かっていないこと(「考え方のクセ(特徴的な認知のゆがみ)」)を理解するための練習と位置づけて、定期的に記入を続けて、自分が納得出来る「結果(適応的思考)」を引き出せるようになることが必要です。
認知療法で「考え記録表(思考記録表)」の記入を続けてうつ病が治癒するには、最低4ヶ月、通常半年〜1年かかるとされています。これは従来の投薬と休養で治療するのと同程度です。


〜〜〜〜〜〜〜〜

最後に認知療法参加者全員が感想を述べました。


僕の感想は「全8回でようやく「考え記録表(思考記録表)」の書き方を覚えて、これから自分に適用するところだった。もう8回認知療法を続けたい」。
他の参加者からは、「自分だけがうつ病で苦しんでるわけでは無いことを知ってよかった」「他の人の意見が参考になった、勇気づけられた」「これから先、認知療法を自分で続けるのは不安がある」「休職中だが、後ろめたさだけは無くなった」etc.様々な感想が出ました。

全8回で、認知療法で確実に回復したと言う話は無かったものの、「認知療法は効果が無かった、受講しても無駄だった」という意見は皆無でした。
僕を含めた全員が、今回の集団認知療法で何らかの手応えをつかんだようです。


最後に、全8回受講の「修了証書」が、受講者に手渡されました。
うつ病が治ったわけでは無いですが、快復のきっかけになる...はず。

また、1ヶ月後にフォローの面接が行われることになりました。
その結果も、可能なら認知療法受診レポートの続編として掲載予定です。